冬が長い土地での体調管理 ― 日照が13時間57分から6時間43分になるまでに、何を仕込むか

身体と心のパフォーマンス向上

「冬が長い土地は大変でしょう」とよく言われます。私もそう思っていましたが、具体的に何がどれくらい大変なのかを、去年の私は一つも言えませんでした。寒い、暗い、気が滅入る ―― どれも感想であって、対策を立てられる形になっていません。

そこで、自分が住んでいる緯度の日の出・日の入り・太陽の高さを、9月から12月まで1日ずつ計算してみました。天文計算の標準的な手法をプログラムに書いて、夏至の日の出・日の入りが公表値と一致することを確かめてから、秋以降を出しています。

出てきた数字は、正直かなり具体的でした。そして「いつ何を仕込むべきか」が、感想では決して見えなかった形で見えました。この記事はその記録です。数字は私の住む場所のものですが、考え方は高緯度に住むなら共通して使えると思います。

日照は13時間57分から6時間43分へ、半分以下になる

まず全体像です。学期が始まる日から冬至までで、昼の長さはこう変わります。

日付昼の長さ9/1からの差
9月1日13時間57分―
12月21日(冬至)6時間43分−7時間14分

3か月半で昼が半分以下になります。7時間14分の減少というのは、1日から「起きている時間の半分近く」が明るさごと抜けるということです。数字にして初めて、これは気合いでどうこうする話ではないと分かりました。

寒くて布団から出られない人のイラスト

問題は長さより「減る速さ」だった

計算していて一番意外だったのはここです。秋分の頃、昼の長さは1日あたり4.8分ずつ短くなっていました。比較のために東京で同じ計算をすると1日2.2分。2倍以上の速さで日が短くなっていることになります。

1日4.8分は、その日単体では絶対に気づけません。しかし1週間で34分、2週間で1時間7分です。「先週まで明るかったのに」という感覚は錯覚ではなく、実際に2週間で1時間以上失われているわけです。

ここから導かれる行動原則は一つでした。暗くなってから対策を始めると、必ず手遅れになる。光目覚ましを買おうと思った時点ではもう暗く、届く頃にはさらに1時間短くなっています。日本にいた頃の感覚で「そのうち準備しよう」と考えると、常に2週間ぶん遅れる計算です。


10月末、一晩で1時間2分が消える日がある

もう一つ、カレンダー上の特異点があります。10月25日、夏時間が終わります。時計が1時間戻るので、日の入りの時刻はこうなります。

  • 前日 ―― 日の入り 18:00
  • 当日 ―― 日の入り 16:58

一晩で1時間2分、夕方が飛びます。実際の昼の長さはその日も前日と数分しか変わりません。変わったのは時計のほうです。それでも生活の体感は、この日を境に別物になります。授業が終わって外に出たときに明るいかどうかは、日照時間ではなく時計の針と日の入りの位置関係で決まるからです。

私はこの日を「体感が最も急に変わる日」として、カレンダーに印を付けています。この週に、夕方に入れていた予定を昼へ動かします。買い物、外での用事、人と会う約束。夕方が暗いこと自体は変えられませんが、夕方に予定を置かなければ影響は受けません。


冬至の太陽の高さは9.6度 ― 日光の質そのものが変わる

長さだけでなく、太陽の「高さ」も計算しました。南中高度 ―― その日いちばん太陽が高く昇ったときの角度です。

冬至の南中高度角度
私の住む場所9.6度
東京30.9度

9.6度というのは、一日で最も高いときでも、太陽が地平線から拳1つぶんほどしか上がらないということです。真昼でも夕方のような斜めの光しか差しません。

これは気分の問題だけでなく、体の中でも起きます。太陽高度が低いと、大気を通る距離が長くなり、皮膚でビタミンDを作るのに必要な波長の紫外線がほとんど地表に届かなくなります。高緯度地域で冬に起きるこの状態は、英語圏では「vitamin D winter」と呼ばれています。外に出て日光を浴びていても、この期間は皮膚でのビタミンD産生が期待できません。

ここは自己判断で対処すべきところではないと考えて、私はまだ夏の蓄えが残っている9月のうちに血中濃度(25(OH)D)を測り、必要があれば医師の指示で補うという順番にしました。冬に入ってから「なんとなく足りない気がする」で始めるより、測ってから決めるほうが確実です。

ビタミンDの補充量や必要性は、血中濃度・体格・食事・持病によって変わります。ここに書いているのは私が取った手順であって、推奨量ではありません。実際に始める前に医療機関で相談してください。


授業日78日のうち、27日は暗い中で出入りする

日照の数字を、自分の時間割と重ねてみました。学期中の授業日78日について、開始時刻と終了時刻を日の出・日の入りと突き合わせます。

  • 日没後に授業が終わる日 ―― 17日
  • 日の出前に授業が始まる日 ―― 10日

合わせて27日、授業日のおよそ3分の1が、暗い中で建物に入るか、暗い中で出てくる日です。この数字を先に知っているかどうかで、受け止め方がだいぶ変わりました。暗い中を歩いて帰る日は「調子が悪い日」ではなく「あらかじめ17日あると分かっている日」になります。

実務的にも効きます。反射材や明るいライトを揃えるのは、17日あると分かっていれば当然の準備です。「たまに暗い日がある」だと後回しになります。

朝の光をイメージしたイラスト

12月の火曜、明るい時間の84%が空きコマの中にある

ここが、計算していて一番はっとした部分です。私の時間割では火曜日が最も長く拘束される日で、8:30に始まり19:30に終わります。12月の火曜を日照と重ねると、こうなりました。

  • 8:30に建物へ入る時点で、まだ夜明け前
  • 19:30に出る頃には、日没から3時間48分が経過している
  • その日、外が明るいのは 6時間47分
  • そのうち 5時間42分 が、10:00–16:15 の空きコマの中に入っている

つまり12月の火曜に日光を浴びる機会は、あの空きコマの中にしか存在しません。6時間47分のうち5時間42分、実に84%がそこに収まっています。授業の前後に外に出ようとしても、どちらも真っ暗です。

私はこの空きコマを、実習の予習に使う枠として設計していました。11月からは、そのうち一部を必ず屋外に出る時間として固定します。勉強時間としては損ですが、12月にこの枠を全部室内で使うと、その週は一度も日光を浴びないまま終わります。

この判断ができたのは、時間割と日照を別々に見ていたら絶対に気づけなかったからです。どちらも単体では「よくある話」でした。重ねて初めて、動かすべき一点が出てきました。


時期ごとに、何を先に仕込むか

ここまでの数字から、やることを時期に貼り付けました。「冬になったらやる」ではなく「この日までにやる」の形にするのが要点です。前述のとおり、暗くなってから始めると必ず遅れます。

時期やることなぜその時期か
9月血中ビタミンDを測り、必要なら医師と補充を決める夏の蓄えが残っているうちに基準値を知るため
10月上旬暖房が入る日を確認する(室温18〜19℃が下限の目安)集中暖房の地域では自分で決められないため
10月25日の週夕方に入れていた予定を昼へ動かす日の入りが一晩で1時間2分早まるため
10月末朝の高照度光を使い始める(朝20〜30分)日の出前に起きる日が出てくるため
11月昼の空きコマの一部を、屋外に出る時間として固定12月には昼しか明るい時間がなくなるため
12月暖房費を別枠で見ておく/室内の湿度を管理する請求が一段上がる月で、暖房で乾燥するため

この表で大事なのは中身より順番だと思っています。どれも冬の対策として一般的なものばかりですが、「いつまでに」が入った瞬間に実行できるものに変わりました。

肩回し運動をする人のイラスト

つらさが続くときの線引き

ここまでは環境の話ですが、環境を整えても落ち込みが続くことはあります。私が自分に対して引いている線は「2週間」と「機能しているかどうか」の2つです。

  • 気分の落ち込みや意欲の低下が2週間以上続いている
  • 授業に出る、食べる、眠るといった日常の機能が明らかに落ちている

どちらかに当てはまるなら、光や睡眠の工夫で粘る段階ではなく、大学の学生相談窓口や医療機関に相談する段階だと決めています。高緯度地域では季節性の気分の変動が知られていて、治療の対象になります。自力で乗り切るものと、そうでないものを先に分けておくと、判断するときに迷いません。

❓ よくある質問

Q1. 自分の住む場所の日照は、どうやったら分かりますか?
日の出・日の入りを月ごとに載せているサイトで十分です。見るべきは3つで、(1)9月と12月の昼の長さの差、(2)夏時間が終わる日、(3)冬至の南中高度。私はプログラムで1日ずつ出しましたが、この3つだけなら調べるのに10分もかかりません。
Q2. 高照度光の機器は本当に要りますか?
日の出前に起きる日が学期中に10日あると分かった時点で、私は必要だと判断しました。逆に言えば、その日数が数日なら優先度は下がります。まず自分の時間割と日の出時刻を突き合わせて、何日あるかを数えるのが先だと思います。
Q3. 冬に運動を続けるコツはありますか?
屋外に依存しない形に先に移しておくことです。私は暗くなる前に、運動を室内で完結する内容に切り替えます。天気と明るさを条件から外してしまえば、続くかどうかは冬とは関係なくなります。
Q4. 日本から来て、一番きついのはいつですか?
数字の上では、日が短くなる速さが最大になる秋分前後と、夏時間が終わる10月末です。真冬は暗いことが前提になっているぶん、むしろ構えができています。変化の速い時期のほうが体はついていきません。

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まとめ

  • 昼の長さは 13時間57分 → 6時間43分(3か月半で半分以下)
  • 秋分ごろは 1日4.8分ずつ短くなる ―― 東京の2倍以上の速さ
  • 10月25日、夏時間の終了で日の入りが一晩で1時間2分早まる
  • 冬至の南中高度は 9.6度。皮膚でビタミンDを作れない期間に入る
  • 授業日78日のうち 27日が、暗い中での出入りになる
  • 12月の火曜は、明るい時間の 84% が昼の空きコマの中にある

計算する前と後で、やっていること自体は特別変わっていません。変わったのは締め切りが付いたことです。「冬は暗いから気をつけよう」は行動になりませんが、「10月25日の週に夕方の予定を昼へ動かす」は行動になります。

高緯度に住むことになった人には、まず自分の場所の数字を出してみることをおすすめします。私の場合、一番効いたのは日照の長さではなく、1日4.8分という減り方の速さでした。この数字を知らないまま秋を過ごすと、対策はいつも2週間遅れます。

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