臨床実習の前に ― まだ行っていない立場から、基礎の実習で先取りできること

学習システム化

最初にはっきり書いておきます。私はまだ臨床実習に行っていません。基礎課程の学生で、いま受けているのは解剖学や組織学の実習です。

だからこの記事は、病棟での体験談ではありません。「臨床実習で困らないために、基礎の実習のうちに練習しておけることは何か」を、自分の実習の中で試している記録です。体験していないことを体験したように書くつもりはないので、その前提で読んでください。

この整理を始めた理由があります。私の学期は実習が145コマ・全体の67%を占めていて、そこで求められることが、臨床実習で求められると言われることと、かなり重なっていると気づいたからです。

基礎の実習と臨床実習で、重なっている部分

臨床実習について言われることを調べていくと、繰り返し出てくる項目があります。それを、いま自分がやっている実習と並べてみました。

臨床実習で言われること基礎の実習で練習できるか
聞かれたことに口頭で即答するできる(実技は口頭形式そのもの)
観察したことを言葉にして伝えるできる(標本の所見を述べる場面がある)
記録として使えるメモを取るできる(書き方の練習になる)
長時間の立ち仕事に耐えるできる(立位の実習が続く)
患者さんとの関わり方できない(相手がいないので代替不能)
多職種のチームの中での振る舞いできない(実地でしか身につかない)

下2行は、基礎の実習では練習できません。ここを「準備できる」と書くのは嘘になるので、書きません。行ってから学ぶ部分として置いておきます。

逆に上4行は、いまの実習でそのまま練習できます。4項目も先取りできるなら、それは十分に価値があると考えて、意識的に取り組むことにしました。

多職種の医療スタッフのイラスト

口頭で答える練習は、いま毎週やっている

解剖の実技試験で問われる構造のリストを数えたら304項目ありました。標本を前にして、指された構造の名前を答え、続けて位置関係や関連する神経・血管を聞かれます。形式としては口頭試問そのものです。

しかも実習は40コマ・60.0時間あり、その中でも随時質問されます。口頭で答える機会が学期に何十回もあるということです。

ここで分かったのは、「書ける知識」と「言える知識」が別物だということでした。用語を目で覚えていると、綴りは書けるのに声に出そうとすると出てきません。頭の中で読んだことしかない言葉は、口が動かない。

だから今は、用語を覚える最初の1回から声に出すようにしています。黙読で覚えてから後で音を足すと、同じことを2回学ぶことになります。臨床実習でも口頭で答える場面が多いと聞くので、この練習はそのまま持ち越せるはずです。


観察して報告する ― 標本相手でも練習になる

「知識より先に観察と報告に慣れよ」という言い方をよく見ます。これは相手が患者さんでなくても練習できる部分がある、というのが実習をやってみての感触です。

組織学の実習では、顕微鏡で見えたものを述べる場面があります。ここで求められるのは「見えたこと」と「そこから考えたこと」を分けて言うことでした。この区別は、そのまま所見と解釈の区別だと思っています。

やってみると、これが難しい。見た瞬間に解釈が混ざります。「〜が見えます」と言うべきところで「〜だと思います」と言ってしまう。逆に、解釈を求められているのに見たままだけを述べてしまう。

今は意識して、述べる前に「これは所見か、解釈か」を一度自分で仕分けるようにしています。標本相手なら間違えても誰にも迷惑がかからないので、練習の場としてはむしろ安全だと考えています。


メモの取り方を、記録用に切り替える

メモについても、実習が始まってから書き方を変えました。講義のメモと実習のメモは、用途が違います。

講義のメモ実習のメモ
後から手に入るかスライドが残るその場限り。二度と手に入らない
書くべきもの自分がつまずいた点言われたこと・見えたこと
書く時間後から止めて書ける手が離せない。短く書く技術が要る

右列がそのまま、臨床実習で必要になると言われているものと重なります。「その場限りの情報を、手を止めずに短く記録する」という技術です。

私が今やっているのは、実習中は単語だけ書いて、終わった直後に文にするという2段階です。実習中に文で書こうとすると、書いている間に次が進みます。

「終わった直後」を確保できているのには理由があります。私の時間割では、実技の試問が終わった直後に校舎を移動する45分の空きが入っているのです。もともと何もしていなかった時間なので、ここを記録の枠に充てています。直後は詰まった箇所が一番鮮明で、帰宅後には半分忘れています。

病棟で相談する医療スタッフのイラスト

外国語で学ぶ場合に、先に潰しておくこと

母語でない言語で医学を学んでいる場合、ここに一段の壁が加わります。知識があっても、その場で言葉が出ない。

基礎の実習でこれを実感しました。標本の前で名前は分かっているのに、説明を組み立てる言い回しが出てこない。知識の問題ではなく、運用の問題です。

対策として、いくつかの型を先に用意しています。

  • 結論から言う型 ―― 最初に一言で答え、それから説明する
  • 時間を稼ぐ型 ―― 「順番に挙げると」「別の言い方をすると」など、詰まったときに沈黙しないための言い回し
  • 分からないと言う型 ―― 曖昧にごまかさず、どこまで分かってどこから分からないかを述べる

3つ目が一番重要だと考えています。臨床の場では、分からないことを分かったふりで通すのが最も危ないはずだからです。基礎の実習のうちに、正直に言う練習をしておく価値はあると思っています。


体力の問題は、基礎の実習で先に出る

意外に大きかったのがこれです。実習は体力を使います。私の週で最も長い日は8:30に始まって19:30に終わり、拘束は11時間になります。

しかもその日は、顕微鏡をのぞく座位の実習の直後に、立位の実習が入っています。座って前傾で固まった直後に90分立つ。この組み合わせは、対策しないと腰にまとめて来ました。

臨床実習はさらに長時間になると聞きます。だとすれば、今のうちに「長い日をどう乗り切るか」を作っておくのは、そのまま準備になります。私が用意しているのはこのあたりです。

  • 座位から立位に移る前に、1分だけ体を起こす
  • 底に厚みのある靴にする(硬い床に90分立つのは、歩くのとは別の負荷)
  • 睡眠は週の合計で管理する(週53時間・1日あたり7.6時間が基準)
  • 長い日には運動を入れない(削られるのが睡眠だけになるため)

どれも派手さはありませんが、体力が続かないと他の全部が落ちるので、優先度は高く置いています。

様々な医療スタッフのイラスト

「調べて分かること」と「行かないと分からないこと」を分ける

この記事を書くにあたって、臨床実習について調べました。そのときに一番役に立ったのは、情報を「調べて分かること」と「行かないと分からないこと」に仕分けたことでした。

種類例いま何をするか
調べて分かる制度、期間、評価の仕組み、必要な書類先に確認して、手続きの締切を控える
練習できる口頭で答える、記録する、体力基礎の実習の中でやる
行かないと分からない患者さんとの関わり、チームの空気何もしない。準備したつもりにならない

3行目を明示的に「何もしない」としているのが、私にとっての要点です。行かないと分からないことについて記事を読み込むと、準備した気分になります。実際には何も準備できていないのに、不安だけが下がる。これが一番よくない状態だと考えました。

1行目は逆に、いま確実にやっておける唯一の領域です。制度や締切は調べれば分かりますし、後から慌てても取り返せません。私は入学直後に、大学の学生相談窓口の連絡先も同じ発想で控えてあります。必要になってから探すと、言語の壁もあって手が止まるからです。

この仕分けは、臨床実習に限らず使えると感じています。先の予定に不安があるとき、その不安が「調べれば消えるもの」なのか「経験しないと消えないもの」なのかを分けるだけで、やることがはっきりします。


後で答え合わせをするために、いま書いておく

最後に、この記事を残しておく理由です。実際に臨床実習へ行った後で、この見立てが当たっていたかを確認したいからです。

いま書いておかないと、後から「自分は何を予想していたか」を思い出せません。行った後の自分は、行く前の自分が何を分かっていなかったかを、正確には再現できないはずです。記録が無ければ、たぶん「だいたい思っていたとおりだった」で終わります。

これは基礎の実習でも同じことをやっています。実技の試問が終わった直後に、答えられなかった箇所を書き出す。直後は詰まった場所が鮮明で、翌日にはほとんど残っていません。予想と結果のずれは、その場でしか捕まえられない情報です。

だからこの記事は、いまの時点での予想として置いておきます。先取りできると書いた4項目のうち、実際に役立ったものはいくつだったのか。そこが分かったら書き足します。外れていた項目のほうが、たぶん価値のある情報になります。

❓ よくある質問

Q1. 臨床実習に行っていないのに、こういう記事を書く意味はありますか?
体験談としては価値がありません。私が書けるのは「行く前に何を準備しているか」だけです。ただ、基礎の実習で先取りできる項目が実際にいくつかあると分かったので、同じ立場の人には使えるかもしれないと考えて残しています。行った後に、この記事が的外れだったかどうかを追記するつもりです。
Q2. 基礎の実習で一番きついのは何ですか?
量ではなく配置です。週あたりの拘束は平均18.6時間で、数字としては多くありません。ただ8:30から19:30まで拘束される日があり、その日の負荷が突出します。合計時間ではなく、1日の端から端までの長さが体感を決めていると感じます。
Q3. 口頭で答える練習は、一人でもできますか?
できます。私は歩きながら声に出して確認しています。座って黙読していると、読めているのか思い出せているのかの区別がつかなくなるからです。判定基準は「名前を言える」「日本語名も言える」「紛らわしい相手との違いを言える」の3つにしています。
Q4. 準備しすぎても意味がないのでは?
その可能性はあります。行ってみたら全然違った、ということは十分ありえます。だからこの記事では、練習できる4項目と、練習できない2項目を分けて書きました。できない部分を準備したつもりになるのが一番まずいと考えています。

※ 見出しをタップすると続きが開きます。

まとめ

  • 私はまだ臨床実習に行っていない。これは体験談ではなく、行く前の準備の記録
  • いまの学期は実習が145コマ・67%。求められることに重なりがある
  • 先取りできる4項目 ―― 口頭で即答/観察と報告/記録用のメモ/長時間への体力
  • 先取りできない2項目 ―― 患者さんとの関わり/チームの中での振る舞い
  • 口頭は実技304構造がそのまま練習になる。「書ける」と「言える」は別物
  • 観察は所見と解釈を分けて述べる。標本相手なら失敗しても安全
  • 外国語なら「分からないと言う型」を先に用意しておく

臨床実習について書かれた記事はたくさんありますが、その多くは実際に回った人が書いたものです。私はまだその立場にありません。

だからこの記事は、行った人の話ではなく「行く前にできることを探した記録」として置いておきます。実際に行った後、この見立てが当たっていたかどうかを書き足すつもりです。外れていた項目こそ、書く価値があると思っています。

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