英語でレポートを書くとき、内容は書けているのに「なんとなく学生の作文っぽい」仕上がりになることがあります。原因のほとんどは語彙の難しさではなく、つなぎ方と、主張の強さの調整にあります。
学術的な英語は、平易な単語でも「どれくらい言い切っているか」を細かく段階分けして書く言語です。この段階を作る道具が、つなぎ語(transition words)と、断定を和らげるヘッジング(hedging)。この記事では、学部を問わず使える表現を場面別に集めました。ゼミのレポート、卒業論文、学会の要旨、どれにもそのまま使えます。
🗂 目次
📌 この記事でわかること
- つなぎ語は「向き」で覚える(順接・逆接・追加・因果・対比・例示)
- ヘッジングは弱さではなく、データの範囲を正確に示す誠実さ
- 断定を強めるブースティングは、1本の論文に数回まで
- 引用は「先行研究が主語」「自分が主語」「事実が主語」の3型で使い分ける
- レポートでよく使われる略語(i.e. / e.g. / et al.)はすべてラテン語
学術英語は「主張の強さ」を語で調整する
日本語のレポートでは「〜と考えられる」「〜の可能性がある」といった語尾で主張の強さを調整します。英語も同じことをしますが、調整する場所が語尾ではなく動詞と副詞にあります。
たとえば同じ結果について、次のように段階をつけられます。下にいくほど強い主張です。
| 強さ | 英語 | 日本語のニュアンス |
|---|---|---|
| 弱 | The results may suggest that… | 〜を示唆する可能性がある |
| ↓ | The results suggest that… | 〜を示唆する |
| ↓ | The results indicate that… | 〜を示している |
| ↓ | The results show that… | 〜を示す |
| 強 | The results demonstrate that… | 〜を実証している |
この段階を意識せずに全部 show で書くと、根拠に対して主張が強すぎる文章になります。逆に全部 may suggest にすると、何も言っていない文章になる。持っている根拠の強さと、使う動詞の強さを揃えることが、学術英語でいちばん最初に身につけるべき技術です。

つなぎ語 ― 論の向きを1語で示す
つなぎ語は数を覚えるより、「向き」で分類して各1〜2個ずつ確実に使えるほうが役に立ちます。以下は、私が実際に使い回している最小セットです。
However, this interpretation has several limitations.
ハウエヴァー、ディス インタープリテイション ハズ セヴラル リミテイションズ
しかし、この解釈にはいくつかの限界がある。
💡 逆接の基本形。but は文頭に置くと口語的なので、書き言葉では however を使う。
Nevertheless, the overall trend remained consistent.
ネヴァザレス、ジ オーヴァオール トレンド リメインド コンシステント
それにもかかわらず、全体の傾向は一貫していた。
💡 however より強い逆接。「不利な事実を認めたうえで、なお」と言いたいときに使う。
In contrast, the second group showed no change.
イン コントラスト、ザ セカンド グループ ショウド ノー チェインジ
対照的に、第2群では変化が見られなかった。
💡 2つを並べて比べるときは in contrast。一方だけを修正するなら however。
Furthermore, this approach can be applied to other settings.
ファーザモア、ディス アプローチ キャン ビー アプライド トゥ アザー セティングス
さらに、この手法は他の場面にも応用できる。
💡 追加の情報を足す。also を文頭に置くより硬く、レポート向き。
Consequently, the initial hypothesis was revised.
コンシクエントリー、ジ イニシャル ハイポセシス ワズ リヴァイズド
その結果、当初の仮説は修正された。
💡 因果の結果側。so は口語的なので書き言葉では避ける。
This is largely because the sample size was limited.
ディス イズ ラージリー ビコーズ ザ サンプル サイズ ワズ リミテッド
これは主に、標本の規模が限られていたためである。
💡 因果の原因側。largely / partly を足すと、原因の寄与の大きさまで表せる。
For instance, three of the five cases followed this pattern.
フォー インスタンス、スリー オヴ ザ ファイヴ ケイシズ フォロウド ディス パターン
たとえば、5例のうち3例がこのパターンに従った。
💡 例示。for example と互換だが、for instance のほうがやや硬い。
In other words, the effect was not dose-dependent.
イン アザー ワーズ、ジ イフェクト ワズ ノット ドウス ディペンデント
言い換えれば、その効果は用量依存的ではなかった。
💡 言い換え。直前の文が専門的すぎたときに、読み手を引き戻すために使う。
| 向き | 使う語 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 逆接(軽い) | However, / On the other hand, | 直前の主張に留保をつける |
| 逆接(強い) | Nevertheless, / Nonetheless, | 不利な事実を認めたうえで主張を維持する |
| 対比 | In contrast, / Conversely, | 2つの対象を並べて比べる |
| 追加 | Furthermore, / Moreover, / In addition, | 同じ方向の根拠を積む |
| 因果(結果) | Consequently, / Therefore, / Thus, | 前の内容から結論を導く |
| 因果(原因) | This is because… / owing to… | 理由を後から説明する |
| 例示 | For instance, / For example, / such as… | 抽象的な主張に具体を添える |
| 言い換え | In other words, / That is, | 難しい表現をかみ砕く |
| 条件・限定 | Provided that… / To the extent that… | 主張の適用範囲を絞る |
| まとめ | Overall, / Taken together, | 複数の結果を1つの結論にまとめる |
ヘッジング ― 言い切らずに主張する
ヘッジング(hedging)は、主張を弱める表現のことです。日本語では「逃げ」に見えるかもしれませんが、学術英語では逆で、自分のデータで言える範囲を正確に示す誠実さとして評価されます。限られた標本から断定すると、内容ではなく態度のほうを批判されます。
These findings suggest that motivation may play a role in this process.
ジーズ ファインディングズ サジェスト ザット モティヴェイション メイ プレイ ア ロール イン ディス プロセス
これらの結果は、動機づけがこの過程で役割を果たしている可能性を示唆する。
💡 suggest + may の二重ヘッジ。もっとも安全で、もっともよく使われる形。
It appears that participants adjusted their strategy over time.
イット アピアーズ ザット パーティシパンツ アジャステッド ゼア ストラテジー オウヴァ タイム
参加者は時間とともに方略を調整したように見える。
💡 It appears / It seems は「観察されたが断定はしない」ときの定番。
To the best of our knowledge, this relationship has not been examined directly.
トゥ ザ ベスト オヴ アワ ナレッジ、ディス リレイションシップ ハズ ノット ビーン イグザミンド ディレクトリー
我々の知る限り、この関係は直接には検討されていない。
💡 「初めての研究だ」と主張したいときの安全な言い方。断定すると反例1つで崩れる。
This interpretation should be treated with caution.
ディス インタープリテイション シュッド ビー トリーテッド ウィズ コーション
この解釈は慎重に扱われるべきである。
💡 考察の終盤で、自分の解釈に自分で留保をつける。査読者の指摘を先回りできる。
One possible explanation is that the two groups differed in prior experience.
ワン ポシブル エクスプラネイション イズ ザット ザ トゥー グループス ディファード イン プライア イクスピアリエンス
ひとつの可能な説明は、両群の事前経験が異なっていたということである。
💡 「これが理由だ」ではなく「説明のひとつ」と置く。複数の解釈を並べる書き方に自然につながる。
| ヘッジの道具 | 例 | 弱め方 |
|---|---|---|
| 法助動詞 | may / might / could | 可能性のレベルを下げる |
| 動詞 | suggest / indicate / appear / tend to | 断定動詞を避ける |
| 副詞 | possibly / likely / relatively / somewhat | 程度をぼかす |
| 形容詞 | potential / apparent / preliminary | 名詞に留保をつける |
| 構文 | It seems that… / One possible… / There is some evidence that… | 文全体に枠をかける |
| 範囲限定 | in this sample / under these conditions / within the scope of… | 適用範囲を明示する |
実務的なコツは、ヘッジを重ねすぎないことです。「It may possibly be suggested that…」のように3つ重ねると、慎重ではなく自信がないだけの文になります。1文につき1〜2個が目安です。
ブースティング ― ここぞという場面で強める
ヘッジングの逆に、主張を強める表現をブースティング(boosting)と言います。ヘッジばかりだと論の芯が消えるので、本当に自信のある1〜2か所だけ強めるのが定石です。
The data clearly demonstrate a consistent difference between the two conditions.
ザ データ クリアリー デモンストレイト ア コンシステント ディファレンス ビトウィーン ザ トゥー コンディションズ
データは2条件間の一貫した差を明確に示している。
💡 clearly + demonstrate は最も強い部類。根拠が十分なときにだけ使う。
It is well established that repetition improves long-term retention.
イット イズ ウェル イスタブリッシュト ザット レピティション インプルーヴズ ロングターム リテンション
反復が長期の保持を高めることは十分に確立されている。
💡 「分野の常識」を述べるときの定型。自分の結果ではなく既知の事実に使う。
These results provide strong support for the proposed model.
ジーズ リザルツ プロヴァイド ストロング サポート フォー ザ プロポウズド モデル
これらの結果は、提案したモデルを強く支持する。
💡 prove(証明する)は避けるのが無難。support の強さで調整するほうが安全。
英語のレポートで初学者がよくやってしまうのが prove の多用です。prove は数学的な証明に近い強さを持つので、経験的なデータに対して使うと、それだけで書き手の水準を疑われます。support / provide evidence for に置き換えるのを癖にしてください。
先行研究への言及 ― 引用の3つの型
引用の書き方は、何を主語に置くかで3つに分かれます。同じ内容でも、主語を変えると論文の中での役割が変わります。
| 型 | 形 | 使う場面 |
|---|---|---|
| 研究が主語 | Smith (2019) reported that… | その研究そのものを話題にする。研究間の違いを論じるとき |
| 事実が主語 | Repetition improves retention (Smith, 2019). | 内容のほうが主役。事実を積み上げていく序論で使う |
| 自分が主語 | We build on the framework proposed by Smith (2019). | 自分の研究の位置づけを述べる。序論の終盤と考察で使う |
Previous studies have consistently reported a similar tendency.
プリーヴィアス スタディーズ ハヴ コンシステントリー リポーテッド ア シミラー テンデンシー
先行研究は一貫して同様の傾向を報告している。
💡 複数の研究をまとめて指す形。現在完了で「今も有効な知見」を表せる。
In contrast to earlier work, the present study focuses on the process rather than the outcome.
イン コントラスト トゥ アーリア ワーク、ザ プレゼント スタディ フォウカシズ オン ザ プロセス ラーザ ザン ジ アウトカム
以前の研究とは対照的に、本研究は結果ではなく過程に注目する。
💡 自分の新規性を示す定型。the present study(本研究)は序論で必ず使う表現。
This gap in the literature motivated the present investigation.
ディス ギャップ イン ザ リタラチャー モウティヴェイテッド ザ プレゼント インヴェスティゲイション
この先行研究の空白が、本研究の動機となった。
💡 序論の最後、目的を述べる直前に置く一文。「なぜやるのか」がこれで埋まる。

図表・数字への言及
図表への言及は型が決まっているので、覚えてしまえば毎回同じ形で書けます。英語では図表そのものを主語にする書き方が自然です。
Figure 2 shows the distribution of responses across the three groups.
フィギュア トゥー ショウズ ザ ディストリビューション オヴ レスポンシズ アクロス ザ スリー グループス
図2は、3群にわたる回答の分布を示している。
💡 Figure / Table は文中で大文字・番号つき。冠詞は付けない(× the Figure 2)。
As shown in Table 1, the two measures were closely related.
アズ ショウン イン テイブル ワン、ザ トゥー メジャーズ ワー クロウスリー リレイテッド
表1に示すとおり、2つの指標は密接に関連していた。
💡 文の途中に差し込める形。本文の流れを止めずに図表を参照できる。
The proportion increased from roughly one-fifth to nearly half.
ザ プロポーション インクリースト フロム ラフリー ワンフィフス トゥ ニアリー ハーフ
その割合は約5分の1から半数近くまで増加した。
💡 数値をそのまま並べるより、変化の向きと幅を言葉にすると読みやすい。
| 言いたいこと | 英語の型 |
|---|---|
| 増えた / 減った | increased from A to B / decreased by X |
| ほぼ同じだった | remained largely unchanged / showed little variation |
| 急に変わった | rose sharply / dropped markedly |
| だいたいの数 | approximately / roughly / about / on the order of |
| 最大・最小 | the highest value was observed in… / the lowest… |
| 割合 | accounted for X% of… / represented a X-fold increase |
| 関連がある | was associated with… / correlated with… |
| 差がなかった | no substantial difference was observed between… |
注意点を1つ。associated with(関連がある)と caused(引き起こした)は絶対に混ぜないでください。相関を因果として書いた瞬間に、レポートの評価は大きく下がります。迷ったら associated with にしておくのが安全です。
書き言葉に直す ― 話し言葉との対照表
内容が良くても、口語表現が混ざっているだけで幼く見えます。書き上げたあとに、次の対応で置き換えるだけで印象がはっきり変わります。
| 話し言葉(避ける) | 書き言葉(使う) | 備考 |
|---|---|---|
| a lot of / lots of | a large number of / considerable | 数えられるかどうかで使い分ける |
| get | obtain / receive / become | get は意味が広すぎて曖昧になる |
| big / small | substantial / marginal | 程度を表す形容詞に置き換える |
| But / So(文頭) | However, / Therefore, | 等位接続詞は文頭に置かない |
| don’t / can’t / it’s | do not / cannot / it is | 短縮形は使わない |
| thing / stuff | factor / element / aspect | 具体的な名詞に置き換える |
| I think | It is argued that… / This study suggests… | 一人称の主観を避ける(分野による) |
| and so on | and others / among others | etc. の連発も避ける |
| really / very | considerably / markedly | 強調の副詞を書き言葉に上げる |
| kind of / sort of | somewhat / to some extent | 曖昧語は正式なヘッジに置き換える |
「I think を避ける」については分野差があります。人文系では一人称を使う書き方も一般的です。提出先の指示と、その分野の論文の書き方に合わせるのが正解なので、自分の分野の論文を2〜3本、表現だけ見るつもりで読むことを勧めます。
💡 💡 語源メモ ― レポートの略語はほぼ全部ラテン語
英語のレポートに出てくる略語は、そのほとんどがラテン語の省略形です。意味が分かると使い分けを間違えなくなります。
i.e. = id est(イド・エスト)「すなわち」。言い換えるとき。 / e.g. = exempli gratia(エクセンプリ・グラーツィア)「例のために」。例を挙げるとき。この2つの取り違えが最も多い間違いです。i.e. は全部を言い換え、e.g. は一部を挙げるだけ。
et al. = et alii(エト・アリイ)「その他の人々」。著者が3名以上のとき。 / etc. = et cetera(エト・ツェテラ)「その他のもの」。人には使いません。
cf. = confer(コンフェル)「比較せよ」の命令形。 / ibid. = ibidem(イビデム)「同じ場所に」。直前と同じ出典。 / N.B. = nota bene(ノタ・ベネ)「よく注意せよ」。 / sic(シク)「そのとおりに」。引用の誤りが原文のままであることを示します。
実験系でおなじみの in vivo(イン・ヴィーヴォ、生体内で)・in vitro(イン・ヴィトロ、ガラスの中で)・in situ(イン・シトゥ、その場で)もラテン語です。vitrum は「ガラス」で、試験管の中を意味しています。読み方の体系は解剖学ラテン語の基本と同じものを使っています。
🧠 確認クイズ
Q1. 「この結果は仮説を支持する可能性がある」を、ヘッジを効かせて英語にするとどうなりますか?
may(法助動詞)と some(程度)の2つでヘッジしています。3つ重ねて may possibly provide some… とすると弱すぎるので、2つまでに留めるのが目安です。
Q2. i.e. と e.g. は、どちらがどちらですか?
Q3. prove を使ってはいけないのはなぜですか?
Q4. However と Nevertheless は、どう使い分けますか?
Q5. つなぎ語は文頭にいくつまで使っていいですか?
※ 見出しをタップすると続きが開きます。
まとめ
- 動詞の強さ(suggest → indicate → show → demonstrate)で主張の強さを揃える
- つなぎ語は「向き」で分類し、各1〜2個を確実に使えるようにする
- ヘッジングは誠実さ。ただし1文につき1〜2個まで
- prove は使わない。support / provide evidence for に置き換える
- 引用は「研究が主語」「事実が主語」「自分が主語」の3型を使い分ける
- associated with と caused を混ぜない。相関を因果として書かない
- 書き上げたら、口語表現の置き換え表を1周かける
学術英語は、難しい単語を使う言語ではなく、言えることと言えないことを正確に区切る言語です。その区切りを作っているのが、この記事で挙げたつなぎ語とヘッジングでした。まずはヘッジングの動詞(suggest / indicate / appear)と、つなぎ語の6方向だけを手元に置いて、次のレポートで意識的に使ってみてください。それだけで、読み手に伝わる「主張の強さ」がはっきり変わります。


コメント