英語のプレゼンで最初に苦しんだのは、内容ではなくスライドとスライドのあいだでした。1枚目の説明は準備した原稿どおりに言えるのに、次のスライドに移る瞬間に言葉が途切れる。数字や図を出したところで「これをどう読み上げるのか」で固まる。発表そのものより、そのつなぎ目で自信を失っていました。
解決策はシンプルで、つなぎ目の言い方を先に決めてしまうことでした。英語のプレゼンには、導入・移行・強調・図表の説明・結論のそれぞれに定型があります。これは英語圏で signposting(道しるべを立てること)と呼ばれていて、聞き手が「今どこにいるか」を見失わないための技術として、学部を問わず指導されるものです。この記事では、そのまま使える型を発表の流れに沿って並べました。
🗂 目次
📌 この記事でわかること
- 英語プレゼンの導入から結論までの、そのまま使える定型表現
- スライドを移るとき・要点を強調するときの signposting の言い方
- グラフや表を英語で説明する順番と、増減を表す動詞
- 小数・分数・単位・パーセントなど、間違えやすい数字の読み方
結論:プレゼンは「つなぎ目の定型」で骨格ができる
英語のプレゼンは、中身のブロックと、それをつなぐ定型文が交互に並んだ構造をしています。中身は自分の研究や調査なので準備できます。問題は、つなぎの部分を毎回その場で英作文しようとすることです。ここを固定してしまえば、意識を中身に集中させられます。
必要なつなぎは意外と少なく、導入・移行・強調・図表・結論の5種類です。それぞれに2つずつ言い方を持っておけば、10分程度の発表は最後まで走り切れます。
もうひとつ大事なのは、冒頭で構成を予告することです。I’ll cover three points today. と最初に宣言しておくと、聞き手が身構えずに済むだけでなく、話している自分も「今2つ目」と現在地を確認できます。緊張して頭が真っ白になったとき、この予告が命綱になります。

導入 ― 名乗り・テーマ・構成の予告
導入は30秒で終わらせるのが基本です。長い自己紹介や謝辞は英語では好まれません。名乗り、テーマ、構成の予告、この3点だけを淀みなく言えるようにしておきます。
Good morning, everyone. Thank you for coming.
グッド・モーニング・エヴリワン。サンキュー・フォー・カミング
みなさん、おはようございます。お集まりいただきありがとうございます。
💡 午後なら Good afternoon。時刻を間違えると出だしで動揺するので、直前に確認する癖をつける。
Today I’d like to talk about …
トゥデイ・アイド・ライク・トゥ・トーク・アバウト
今日は〜についてお話しします。
💡 最も無難で、どの学部でも通用する。I’m going to present … でもよい。
I’ll cover three points today. First, … Second, … And finally, …
アイル・カヴァー・スリー・ポインツ・トゥデイ
今日は3つの点を扱います。第1に〜、第2に〜、最後に〜。
💡 構成の予告。数を先に言うのが重要で、聞き手が終わりを見通せる。
Feel free to interrupt me if anything is unclear.
フィール・フリー・トゥ・インタラプト・ミー・イフ・エニスィング・イズ・アンクリア
わからない点があれば途中で止めてください。
💡 質問を歓迎する姿勢を先に示す一言。ゼミ形式の発表と相性がいい。
I’ll take questions at the end.
アイル・テイク・クエスチョンズ・アット・ジ・エンド
質問は最後にお受けします。
💡 逆に、途中で止められたくないときはこちらを宣言しておく。
本論をつなぐ ― 移行と強調
スライドを切り替える瞬間に無言になるのが、いちばんもったいないところです。ここに一文入るだけで、発表全体が急に「慣れている人」の話し方になります。
あわせて、強調の型も用意しておきます。すべてを同じトーンで話すと、どこが結論なのか伝わりません。「ここが重要です」と明示的に宣言してよいのが英語のプレゼンです。
| 用途 | 英語 | 日本語 |
|---|---|---|
| 次の話題へ | Let’s move on to the next point. | 次の論点に移ります |
| 次の話題へ | That brings me to my second point. | そこから2つ目の論点に入ります |
| 前を受けて | As I mentioned earlier, … | 先ほど触れたように〜 |
| 前を受けて | Building on that, … | それを踏まえると〜 |
| 強調 | The key point here is … | ここで重要なのは〜です |
| 強調 | What I want to highlight is … | 強調したいのは〜です |
| 言い換え | In other words, … | 言い換えると〜 |
| 例示 | To give you an example, … | 例を挙げると〜 |
| 区切り | So far, we’ve looked at … | ここまで〜を見てきました |
表の中で特に覚える価値が高いのは That brings me to my second point. です。導入で予告した番号と対応させられるので、聞き手の中で構成がそのまま組み上がります。私は発表原稿を作るとき、この一文をスライドのノート欄に先に書き込んでから中身を書くようにしています。

図表を説明する
グラフや表を出したときは、①何の図か → ②軸の説明 → ③読み取れることの順で話します。この順番を崩して、いきなり結論から入ると聞き手が図を追えません。逆に言えば、順番さえ守れば表現は3つで足ります。
As you can see from this graph, …
アズ・ユー・キャン・スィー・フロム・ディス・グラフ
このグラフからわかるように〜。
💡 図表の説明で最も使われる出だし。this table / this diagram に差し替えられる。
The horizontal axis shows time, and the vertical axis shows the number of cases.
ザ・ホリゾンタル・アクシス・ショウズ・タイム
横軸は時間、縦軸は件数を表しています。
💡 x軸 = horizontal axis、y軸 = vertical axis。axis(アクシス)の複数形は axes(アクシーズ)。
This suggests that …
ディス・サジェスツ・ザット
このことは〜を示唆しています。
💡 断定を避けたいときはこれ。This proves that … は根拠が十分なとき以外は使わない。
増減を表す動詞は、正確さより強さの段階を押さえておくほうが実用的です。同じ「増えた」でも、緩やかなのか急激なのかで選ぶ単語が変わります。
| 変化 | 動詞・表現 | 読み・補足 |
|---|---|---|
| 緩やかに増える | rise gradually / increase slightly | ライズ・グラデュアリー |
| 急激に増える | rise sharply / surge | サージ。急騰・急増 |
| 緩やかに減る | decline gradually / decrease slightly | ディクライン |
| 急激に減る | drop sharply / plummet | プラメット。真っ逆さまに落ちる |
| 横ばい | level off / remain stable | レヴェル・オフ |
| 頂点に達する | peak at … | ピーク・アット。peak は動詞でも使える |
| 底を打つ | bottom out | ボトム・アウト |
| 2倍になる | double | ダブル。3倍は triple |

数字を正しく読み上げる
原稿を書いていると気づきませんが、数字は声に出す瞬間に必ず詰まるポイントです。特に小数・分数・年号・単位は、書けても読めないことが多い。発表前に一度、数字だけを声に出して確認しておくと事故が減ります。
| 表記 | 読み方 | 注意点 |
|---|---|---|
| 0.75 | zero point seven five | 小数点以下は1桁ずつ読む。seventy-five とは読まない |
| 3/4 | three quarters | 分子が2以上なら分母に s が付く。1/4 は a quarter |
| 2/3 | two thirds | 分母は序数。1/3 は a third |
| 25% | twenty-five percent | percent はラテン語 per centum(ペル・ツェントゥム/100につき)から |
| 1,500 | one thousand five hundred | 米語では fifteen hundred も一般的 |
| 1.5 million | one point five million | million / billion は複数形にしない |
| 2026 | twenty twenty-six | 年号は2桁ずつ。2005 は two thousand and five |
| 5 cm | five centimetres | 単位は必ず複数形。1 cm のときだけ単数 |
| p < 0.05 | p is less than zero point zero five | 統計の表記はそのまま英語で読み下す |
| 1st / 2nd / 3rd | first / second / third | 順位は序数。日付の読みでも同じ |
💡 percent と data ― プレゼンに残るラテン語
percent はラテン語の per centum(ペル・ツェントゥム)、つまり「100につき」がそのまま英語になったものです。per は「〜につき」、centum(ツェントゥム)は100。century(世紀)や cent(セント硬貨)も同じ語根です。
data は datum(ダートゥム)の複数形で、もとは「与えられたもの」という意味です。つまりデータとは本来「観測によって与えられた事実」を指す言葉でした。学術的な文章では The data show … と複数扱いにするのが伝統ですが、近年は The data shows … と単数扱いする書き方も広く受け入れられています。発表で使うならどちらでも構いませんが、1本の発表の中で揃えることだけは意識してください。
同じくプレゼンで頻出する versus(ヴェルスス/〜に対して)、et cetera(エト・ツェーテラ/その他)、i.e. = id est(イド・エスト/すなわち)、e.g. = exempli gratia(エクセンプリ・グラーティア/例えば)も全部ラテン語です。i.e. と e.g. の取り違えは英語圏でもよくある間違いなので、スライドに書くときは注意してください。
結論とまとめ・時間とトラブルへの対応
終わり方が曖昧だと、良い発表でも印象が薄くなります。「まとめに入る」と宣言してから、要点を数えて言い直す。これだけで締まります。
To sum up, …
トゥ・サム・アップ
まとめると〜。
💡 最も短い締めの合図。In conclusion, … も同じ役割。
So, to come back to my original question, …
ソウ・トゥ・カム・バック・トゥ・マイ・オリジナル・クエスチョン
最初の問いに戻ると〜。
💡 導入で立てた問いに答える形で閉じると、構成が円環になって印象に残る。
Thank you for your attention. I’m happy to take any questions.
サンキュー・フォー・ユア・アテンション
ご清聴ありがとうございました。質問をお受けします。
💡 Thank you for listening よりフォーマル。この後の質疑応答に自然につながる。
時間とトラブルへの対応も、言い方を用意しておけば動揺しません。時間が押しているときに黙って早口になるより、正直に宣言して飛ばすほうがずっと印象がよくなります。
I’m running short on time, so I’ll skip this slide.
アイム・ランニング・ショート・オン・タイム
時間が押しているので、このスライドは飛ばします。
💡 焦って早口になるより、宣言して飛ばすほうが伝わる。
Sorry, there seems to be a technical problem. Please bear with me.
プリーズ・ベア・ウィズ・ミー
すみません、機材の不具合のようです。少々お待ちください。
💡 bear with me は「我慢して付き合ってください」。トラブル時の定番。
Can everyone at the back see this clearly?
キャン・エヴリワン・アット・ザ・バック・スィー・ディス・クリアリー
後ろの方まで見えていますか。
💡 会場を気にかける一言。落ち着いて見える効果もある。
🧠 ミニクイズ:英語プレゼン、これは何と言う?
Q1. 0.75 を声に出して読む。
Q2. グラフの縦軸・横軸を英語で説明したい。
Q3. 導入で予告した2つ目の論点に移りたい。
Q4. グラフの数値が急激に落ちている。「急落した」と言いたい。
Q5. i.e. と e.g. はどちらが「例えば」か。
※ 見出しをタップすると続きが開きます。
まとめ
- プレゼンで詰まるのは中身ではなく「つなぎ目」。ここを先に固定する
- 導入で必ず構成を予告する。話し手にとっても現在地の目印になる
- 図表は「何の図か → 軸 → 読み取れること」の順で説明する
- 増減は強さの段階(gradually / sharply / plummet)で使い分ける
- 小数・分数・年号・単位は、発表前に必ず声に出して確認しておく
英語のプレゼンがうまい人は、特別な語彙を使っているわけではありません。同じ定型を、迷いなく同じ場所で出しているだけです。次の発表では、I’ll cover three points today. と That brings me to my second point. の2つだけを必ず入れると決めてみてください。この2文があるだけで、発表全体に骨が通ります。


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