海外医学部の入試面接とモチベーションレター ― 何を聞かれ、何を書くか

海外医学部への道

海外の医学部を受けるとき、多くの人が最後まで手をつけられないのが、モチベーションレター(志望理由書)と面接です。試験の点数は勉強すれば動くとわかるのに、この2つは何をどう準備すればいいのかが見えにくい。私も出願の直前まで、白い画面を開いては閉じるということを繰り返していました。

実際に準備してみて分かったのは、この2つは作文の上手さではなく、材料の準備で決まるということです。聞かれることはある程度決まっていて、答えの中身になる材料も自分の過去にしかない。だから、材料を先に集めて構造に流し込むという順番でやれば、英語が完璧でなくても形になります。この記事では、その手順を書きます。

文章力ではなく「材料の棚卸し」で決まる

結論から言います。モチベーションレターと面接の準備で最初にやるべきなのは、文章を書くことではなく、自分の過去から使える出来事を全部書き出すことです。私はA4の紙に、思いつく限りの経験を箇条書きにするところから始めました。

この作業をせずに書き始めると、必ず「医療に興味があります」「人の役に立ちたいです」といった、誰でも書ける文章になります。誰でも書ける文章は、読む側からすると情報がゼロです。逆に、具体的な出来事が1つでも入っていれば、その人にしか書けない文章になります。

書き出す材料は、立派なものである必要はありません。私が最終的に使ったのは、部活で怪我をして治療を受けた経験、家族の入院に付き添ったときに見たこと、それから理科の科目のうち何が好きで何が苦手だったか、という程度のものです。大事なのは規模ではなく、そこから何を考えたかを説明できるかどうかでした。

書類を書いている人のイラスト

大学側が何を確認したいのかを先に理解する

書類と面接を通じて確認されているのは、大きく4つだと私は理解しています。ここを押さえると、何を書けばいいかが決まります。

確認されていること背景にある心配示し方
6年間続けられるか途中でやめられると、大学側にも本人にも損失が大きい長く続けた経験と、うまくいかない時期をどう乗り越えたかを具体的に書く
この進路を理解しているかイメージだけで来ていないか医療の現場や学びの内容について、自分が知っていることを具体的に書く
英語で学べるか講義と実習についてこられるか面接での受け答えそのものが証拠になる。流暢さより正確さと聞き返す力
外国で生活できるか生活面で破綻しないか一人暮らしや異文化に触れた経験、生活を自分で回した経験を挙げる

この4つを見ると、志望動機だけを厚く書いても足りないことがわかります。私は最初、動機の話ばかり書いていて、「続けられる根拠」と「生活面」がまるごと抜けていました。書き終えたら、この表の4行それぞれに対応する記述があるかを確認するといいです。


モチベーションレターの構成 ― 5ブロックに割る

文章の型としては、次の5ブロックに割るのが扱いやすいです。分量の目安は全体で1ページ前後(大学が指定していればそれに従う)。

ブロック書く内容分量の目安
①きっかけ医学を志すことになった具体的な出来事。1つに絞る2〜3文
②その後の行動きっかけのあとに自分が実際にやったこと3〜4文
③この進路への理解医学を学ぶこと、医師として働くことについて知っていること3〜4文
④なぜ海外か / なぜこの大学か国内ではなくここを選ぶ理由。カリキュラムや制度の具体名を入れる3〜4文
⑤卒業後の見通しどこで何をしたいか。断定でなくてよいが、考えた形跡を残す2〜3文

②が一番差がつきます。きっかけだけなら誰にでもありますが、そのあと何をしたかには、その人の行動の癖が出るからです。本を読んだ、講演を聞きに行った、語学の試験を受けた、関連する活動に参加した — 大きさは問いません。動機と行動がつながっていることが伝わればいい。

④は、大学ごとに書き直す必要があります。使い回しは読めばわかります。私は募集要項とカリキュラムのページを読んで、実習が始まる学年、使用言語、教育の特徴のうち自分の希望と結びつく点を1つ挙げるようにしました。候補校の絞り込み方は EU圏の英語で学べる医学部 完全ガイド にまとめてあります。


落ちやすい書き方 ― 私が最初に書いてしまった失敗

最初の草稿を読み返して、自分で全部消した箇所を挙げます。同じ失敗をしなくて済むはずです。

  • 「幼い頃から医師になりたいと思っていました」 ― 検証できず、行動の裏づけがない。書くなら、その後に何をしたかとセットにする
  • 「人の役に立ちたい」だけで止まる ― なぜ他の職業ではなく医師なのかが説明できていない
  • 感動的なエピソードを盛る ― 面接で深掘りされたときに支えきれない。事実だけで書く
  • 大学を褒める文章に紙幅を使う ― 読み手はその大学のことを知っている。必要なのは「自分との接続」
  • 難しい単語を並べる ― 誤用が起きやすく、読みにくい。平易な語で正確に書くほうが評価される

それから、書類は面接の台本になるという点を意識しておくと得をします。面接官は目の前の書類から質問を作ります。つまり、書類に書いたことは全部聞かれる可能性がある。だから「聞かれたら困ること」は最初から書かないほうがいいし、逆に聞かれたい話題を意図的に置いておくという使い方もできます。


面接で実際に聞かれることと、答えの型

面接の形式は大学によって違い、教員1人との短い面談のこともあれば、複数人のパネル形式のこともあります。ただ、聞かれる内容の系統はかなり共通しています。

質問の系統具体例準備しておく材料
動機なぜ医学か / なぜ海外か / なぜこの大学か書類の①③④をそのまま口頭で言える形にしておく
自己理解強み / 弱み / 失敗した経験弱みは「自覚して対処している」形で言えるようにする
ストレス耐性つらかった時期をどう乗り越えたか実際にあった出来事を1つ。乗り越え方の具体性が要る
生活面家族から離れて暮らせるか / 言葉の壁をどうするか現地の言語を学ぶ計画など、具体的な予定を持っておく
進路の理解卒業後の予定 / 帰国して働くつもりか考えている途中でよい。ただし何も考えていないのは避ける
逆質問最後に質問はありますか1つは用意する。募集要項に書いてあることは聞かない

答え方の型としては、経験を語るとき STAR(Situation 状況 → Task 課題 → Action 行動 → Result 結果)の順で話すと崩れません。特に Action を厚く、Result は短く。日本語だと結果や感想を長く話しがちですが、聞かれているのはあなたが何をしたかです。

それと、答えられない質問が来たときの処理も決めておくと安心です。私は「知らないことを知らないと言い、そのうえで自分が考える範囲を述べる」と決めています。作り話をすると、次の質問で必ず崩れます。

面接を受けている人のイラスト

英語で答える準備 ― 暗記ではなく骨組みを覚える

英語での面接に向けて、答えを丸暗記するのはおすすめしません。私も最初は全文を書いて覚えようとしましたが、少し違う聞かれ方をした瞬間に止まりました。そのうえ、暗唱している感じは相手に伝わります。

代わりにやったのは、答えの骨組みだけを英語で用意することです。質問ごとに「キーワード3つ」だけを決めて、その3つを順に話す。文章は毎回その場で作ります。これだと聞かれ方が変わっても崩れませんし、間が空いても不自然になりません。

  • 質問ごとにキーワード3つを決める(文章は覚えない)
  • 自分の経験の名詞(部活名・科目名・活動名)だけ、英語で正しく言えるようにしておく
  • 聞き取れなかったときの聞き返し表現を3つ持っておく — これが一番効く
  • 考える時間を作る表現(That’s a good question. Let me think for a second.)を1つ用意する
  • 録音して聞き返す。速さより、文の終わりまで言い切れているかを確認する

聞き返しや間の作り方の具体的な表現は 発表後の質疑応答で崩れない英語、話の組み立て方は 英語プレゼンの型 に整理してあります。面接は形式こそ違いますが、使う表現はかなり重なります。

必要な英語力の水準そのものについては 海外医学部受験に必要な英語力はどれくらい? のほうを参照してください。


当日の実務 ― オンライン面接で事故らないために

オンライン面接が増えていますが、ここは準備でほぼ全部防げる領域です。私が実際に見聞きしたトラブルと対策を並べます。

起きること対策
音声が途切れる有線かイヤホンマイクを使う。開始15分前に別の人と通話して確認する
時差を間違える招待メールの時刻がどの時間帯で書かれているかを確認し、カレンダーに両方書く
接続先が分からないリンクを前日に開いて、必要なアプリの更新を済ませておく
逆光で顔が見えない窓を背にしない。正面か斜め前から光が来る位置に座る
回線が落ちる連絡先(担当者のメール)を手元の紙に控えておく。落ちたら慌てず再接続し、直後に一報を入れる
書類が手元にない提出した書類は印刷して机に置く。画面に出すと視線が動いて分かる

対面の場合は、会場までの移動時間を実際に調べておくことと、身分証・受験票・提出書類の原本を前日に一か所にまとめておくことくらいです。当日の朝に判断することを減らすのが目的で、これは試験でも面接でも同じです。

オンライン面接のイラスト

❓ よくある質問

Q1. モチベーションレターは誰かに添削してもらうべき?

内容の添削と、英語の添削を分けて考えるといいです。内容は自分の経験を知っている人に、英語は英語ができる人に。ただし、他人の言葉に置き換わりすぎると面接で自分の言葉として話せなくなるので、最終的な言い回しは自分で決めることをおすすめします。

Q2. 面接は日本語でやってもらえる?

英語で行われるのが一般的です。ただし、求められているのは流暢さより「質問を理解して、筋の通った答えを返せるか」です。聞き取れなかったときに聞き返せることのほうが、速く話せることより評価されると感じました。

Q3. 弱みを聞かれたら何と答えればいい?

「弱みはありません」は避けたほうがいいです。私は、実在する弱みを1つ挙げて、それに対して今やっている対処までをセットで話す形にしています。致命的なもの(継続が難しくなる類のもの)は選ばない、というのが唯一の注意点です。

Q4. 志望理由に「日本の受験がうまくいかなかったから」と書いてもいい?

そのままの形だと、消去法で選んだように読めます。ただ、事実として経緯がある場合、隠すと面接で辻褄が合わなくなります。私は「経緯は事実として短く触れ、そのうえでいまこの進路を選んでいる理由に紙幅を割く」形をすすめます。

Q5. 面接の練習相手がいない場合は?

録音して自分で聞き返すだけでも、かなりの部分は分かります。特に「文の終わりまで言い切れているか」「同じ表現を繰り返していないか」は自分で気づけます。私は質問カードを作って、ランダムに引いて答える練習をしていました。

※ 見出しをタップすると続きが開きます。

まとめ

  • 書き始める前に、使える経験を紙に全部書き出す(材料集めが9割)
  • 大学が見ているのは継続性・理解・英語・生活力の4つ。全部に触れる
  • レターは5ブロックに割る。②「その後の行動」が一番差がつく
  • 書類は面接の台本になる。聞かれて困ることは書かない
  • 面接の答えは丸暗記せず、キーワード3つの骨組みで持つ
  • 聞き返し表現を3つ用意する。流暢さより正確さが見られている
  • オンライン面接の事故は、前日までの確認でほぼ防げる

この2つは、点数と違って準備した分が素直に反映される部分です。しかも、ここで整理した「なぜ自分はこの進路を選ぶのか」は、入学後に苦しくなった時期にもう一度読み返すことになります。今日やるなら、まずは紙を1枚出して、思いつく経験を書き出すところから始めてみてください。

※ 出願書類の形式・面接の方式・提出期限は大学ごとに異なり、年度によって変更されます。本記事は準備の考え方をまとめたもので、個別の大学の要件を示すものではありません。実際の出願にあたっては、必ず各大学の最新の募集要項をご確認ください。

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